「チュチェ思想は人間の本質的特徴と世界における人間の地位と役割を解明して、人間中心の世界観を確立しました。」
世界の本質にたいする主体的な見解の独創性と優位性は一言でいって、人間を単なる物質世界の一部分ではなく、世界の主人の地位にすえて世界の本質を解明したところにあります。
人類の哲学思想史を振り返ってみれば、世界にたいするさまざまな見解が提起されましたが、マルクス主義哲学以前にはいかなる哲学も世界の本質を正しく解明しませんでした。
マルクス主義哲学は世界が物質からなり、絶えず変化発展するという唯物弁証法的見解を提起し、世界の本質を歪曲するあらゆる非科学的で反動的な見解を克服して史上初めてそれにたいする科学的な見解を確立しました。しかしマルクス主義創始者たちが考察した世界は、人間も物質的存在であるという共通性の見地から見た世界であります。こういうことから彼らは、人間も物質で統-されている世界の単純な一部分であると考察しました。
人間を単なる世界の一部分としてのみ考察しては、人間が主人の地位を占め、その発展において決定的な役割を果たす現実世界の本質を全面的に解明することができません。ここに世界の本質にたいする唯物弁証法的見解の制約性があります。
世界の本質を科学的に全面的に解明するためには、他の物質的存在と根本的に区別される人間の本質的特徴が解明されなければなりません。人間の本質的特徴が解明されてこそ人間が支配者、改造者として特出した地位を占め決定的な役割を果たす現実世界の本質を科学的に解明することができます。
チュチェ思想は人間が自主性、創造性、意識性をもつ社会的存在であることを解明したうえで、人間を世界でもっとも優れて有力な特出した存在と押し立てました。こうしてチュチェ思想は、世界は人間によって支配され改造される世界であることを新しく解明することができました。
人間の本質的特徴にたいする完壁な解明をふまえて現実世界の本質を新たに解明したことは、マルクス主義哲学を含む従来のいかなる哲学も解明できなかった、世界の本質にたいする完全に独創的な見解であります。
もちろん世界が人間によって支配され改造される世界であるという主体的見解は、世界が物質からなり絶えず変化発展するという唯物弁証的理解を前提としています。世界が精神からなり、その精神の産物であると考察する観念論的見解を克服した唯物弁証法的理解を是認することなしには、世界が人間によって支配され改造されるという主体的見解が成立しません。しかしだからといって世界の本質にたいする主体的見解が唯物弁証法的理解に解消されるとか、またその単純な継承発展であると考えることに留意しなければなりません。
人間との関係で明らかにした世界の本質にたいする見解と同様に、世界の変化発展にたいする主体的見解も、世界の変化発展に関するマルクス主義的見解と異なる新しくて独創的な見解であります。
マルクス主義唯物弁証法が対立物の統-と闘争の法則、量的変化の質的変化への移行の法則、否定の否定の法則を明らかにして、物質世界の運動発展過程に作用する一般的法則を解明したことは周知の事実であります。しかし物質世界の運動発展に関するマルクス主義弁証法の三つの法則は、一連の制約性をもっています。
それはまず、現実世界の変化発展過程を、人間の積極的な活動による目的意識的な改造発展過程ととらえず、自然史的過程としかとらえなかったというところにあります。
マルクス主義の創始者たちは、人間の運動も単なる物質的運動の一形態としてみなし、物質世界の一般的運動法則を解明しただけに、世界の変化発展を人間による世界の支配と改造発展過程ととらえることができませんでした。こういうことからマルクス主義唯物弁証法の三つの法則は、世界発展にたいする一面的な理解しか与えていません。
現実世界は自然だけでなく社会を包括しており、社会的運動の法則は自然とは異なって人間の自主的、創造的、意識的な活動を通じて作用します。世界の変化発展に関するマルクス主義唯物弁証法の三つの法則は、主体の主動的な作用と役割によって形成される社会的運動については正しい解明を与えることができません。
世界の発展に関するマルクス主義唯物弁証法の三つの法則の制約性はまた、人間の運命開拓の根本方途を直接解明できないところにあります。
マルクス主義唯物弁証法の三つの法則はあくまでも、人間が支配し改造する対象である物質世界そのものの変化発展の法則性として、人間が世界を改造するうえで知るべき一連の見解を与えているが、人間の運命開拓の根本方途は解明していません。
人間の運命開拓の根本方途を直接的に解明するためには、人間による世界の支配と改造発展の法則性を解明しなければなりません。しかしマルクス主義唯物弁証法の三つの法則は、物質世界そのものの変化発展過程を考察するにとどまり、人間が自己の運命を切り開くためには積極的に世界を改造して人間に奉仕する世界につくりかえなければならないという人間の運命開拓の根本方途を直接解明することができませんでした。
マルクス主義唯物弁証法の制約性は、チュチェ思想によって人間による世界の支配と改造発展の法則性が新たに解明されることにより克服されました。
人間による世界の支配と改造発展の法則性にたいする主体的な見解の独創性と優位性は、現実世界発展の法則性を人間を中心にして解明したことにあります。
チュチェ思想は、世界が人間の主動的な作用と役割によって発展し、人間に奉仕する方向に、そして人間の発展に相応して発展することを明らかにすることにより、人間との関係で世界がいかなる要因によって、いかなる方向、いかなる様相を帯びて発展するかを新しく解明しています。
結局、人間を中心にして世界の変化発展の法則性を解明した主体的見解は、世界の変化発展が、物質の相互作用によって自然発生的におこなわれる過程とみなす唯物弁証法の制約性を克服して、社会的運動の固有の法則性を解明し、人間を中心にして世界の変化発展に対応すべき主体的な観点と立場を解明しうる理論的基礎をもたらしました。
このように人間を中心にして新しく解明された世界にたいする主体的見解は、世界にたいする哲学的見解において一大転換となります。